第37回住まいのリフォームコンクール・国土交通大臣賞受賞

お知らせ 2020.10.05

第37回住まいのリフォームコンクール・国土交通大臣賞受賞

第37回住まいのリフォームコンクール 国土交通大臣賞

この度、公益財団法人 住宅リフォーム・紛争処理支援センター主催の「第37回住まいのリフォームコンクール」におきまして、さいたま市のリフォーム・リノベーション物件「掛軸の家」が国土交通大臣賞(最優秀賞)を受賞いたしました。

先日のグッドデザイン賞受賞に続き2つ目の受賞となりました。

リフォーム業界では最も権威のある賞を受賞できたことは、携わっていただいた方々の支えがあってのことです。本年度はコロナウイルスの影響により現地の審査や授賞式が中止され、関係者の方々にお会いすることが出来ませんでしたが、関わって頂いたみなさまにもこの場を借りて改めてお礼を申し上げます。誠にありがとうございました。

作品の詳細は、Projectの「掛け軸がつないだ物語」をご覧ください。

第37回の受賞作品は、リフォーム支援ネットのサイトでご覧いただけます。

コンペの詳細は、公益財団法人 住宅リフォーム・紛争処理支援センターのサイトでご覧いただけます。

 

国土交通大臣賞 審査員による講評

作品名「掛軸の家 ―引き継がれる家族の物語―」

この建物は 140 年ほど前に岩槻(現在:さいたま市)に建てられた「長屋門」であり、建物の用途としては茶農家の奉公人の住まいでもあった。その後、曳き家があって位置や方向が変わるなどの変化もあったが、その際に従来の基礎から布基礎への改修なども行われた模様である。こうした記録からは、この建物が、長い年月にわたって大切に使われて来たことが伺われる。ただし今回のリフォームの計画に際しては、この建物は農器具庫として使われていていたとは言え、近年の状況では風雨が吹き込むなど、とても人が生活できる状況ではなかったとのことである。

こうした建物を再生・活用するため、損傷の大きい箇所以外での既存躯体の活用や、耐震性能の強化や断熱性能の向上などを考慮したリフォームが計画された。一般的な考えでは、現代的な設計で建て替えやリフォームを考えるのが一般的であり、そういう方法によれば、時間的にも費用的にも「効率よく」リフォームが実現したであろう。

しかし今回のリフォームでは、改修前は居住スペースではなかった建物を、現代の生活に相応しい居住スペースとして改修するための大幅な改善が実施された。特に、既存の構造体を出来る限り利用して、当然ながら必要な補強を施し、確実な耐震性の確保を基本とする構造が求められた。その結果、すっきりした外観や、小屋組を見せる大空間など、連続性のある空間構成が実現され、現代の生活に相応しいモダンで快適な居住空間に生まれ変わっている。
具体的な改修の例としては、エフロレッセンス(セメントを用いた材料の硬化後の表面に発生する白い綿状の結晶物)を敢えて抑えず 1 枚 1 枚異なる窯業系材料で既存の躯体との調和を図ること、建物正面下屋部分に於ける米ヒバと古材とのコントラストや時間的な変化も楽しむこと、更に外壁上部には左官吹付で鮮やかな青のアクセントを付けること、などの様々な工夫が施されている。

また、伝統的建築の良さを残しながら居住性能を確保することも考慮されており、伝統構法の小屋組の構造美を生かすべく、屋根の軽量化や壁面の軽量化と美観を両立させる努力なども行われている。この建物の快適性や伝統的デザインなどには、居住者からも十分な満足が得られている模様である。
以上のようにこの作品は、伝統構法の力強さを存分に生かしながら、現代の機能および快適性を十分に実現し、現代の快適な生活に相応しい居住性やデザインなどを遜色なく実現している。一般的に見られる「古民家リフォーム」とは、ある意味で一線を画したとも言うべき「伝統構法の現代的解釈」の好事例と言って良い作品である。こうした様々な「ディテールの遊び」をちりばめながら、今後とも長い時代に亘って伝統とモダンさが両立する、まさに現代の伝統構法と言える作品である。

歴史と伝統を重んじながらも、現代の生活様式の実情を見事に捉え、生活の利便性・快適性などを存分に生かしたこの作品は、国土交通大臣賞に相応しい優れた作品である。

2020.10.7
埼玉建築新聞掲載
10月7日の埼玉建築新聞に先日受賞した、国土交通大臣賞の記事を掲載いただきました。